会社の退職に伴い必要な手続きの中で、今回は健康保険の切り替え手続きについて説明します。
転職先が決まっていて退職後すぐに新しい職場で働ける場合は特に問題ありません(新しい職場の健康保険に加入する)が、一時的にでも無職になる場合は健康保険の切り替え手続きが必要です。
目次
健康保険の切り替え:3つの選択肢
健康保険を切り替える場合の選択肢は、3つあります。
- 「国民健康保険」に加入する
- 退職前の健康保険を「任意継続」する(任意継続被保険者になる)
- 被保険者である配偶者など家族の「被扶養者」になる
どれを選ぶかにより負担する保険料が異なってきますので、事前に加入要件や保険料などを確認したうえで、ご自分に合った選択をしましょう。
国民健康保険
自営業者や無職の人など、職場の健康保険に入っていない人すべてが加入する保険です。
加入要件 | 他のいずれの健康保険にも加入していない場合、国民健康保険への加入が必須です。 |
手続方法 | 住んでいる市区町村の役場窓口で、退職後14日以内に手続きをする。 |
任意継続
会社などを退職して被保険者の資格を喪失した時は、次の要件を満たしている場合、本人の希望により継続して被保険者となることができます。
加入要件 | 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること。 ※退職せず、勤務時間・日数の減少により健康保険の資格を喪失した場合も該当。 |
手続方法 | 資格喪失日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出する。 ※住んでいる住所地を管轄する協会けんぽ支部へ提出する。 ※健康保険組合に加入していた人は、健康保険組合で手続きをする。 |
被扶養者
加入要件 | 配偶者など家族が職場の健康保険(社会保険)の被保険者であり、本人の年間収入が130万円未満かつ被保険者の年間収入の2分の1未満であること。 |
手続方法 | 配偶者など家族が勤めている職場を通じて手続きをする。 |
選び方
加入要件を満たしているのであれば、被保険者である配偶者など家族の「被扶養者」になるのが最もオススメです。
この場合、健康保険に加入している被保険者の保険料が上がることもなく、また被扶養者(あなた)にも保険料負担は一切ありません。
被扶養者になれなくて「任意継続」が可能な場合は、「国民健康保険」と「任意継続」とを比較して選ぶようにしましょう。
任意継続被保険者になれるとしても、条件により国民健康保険よりも保険料が高くなってしまう場合があります。
「国民健康保険」と「任意継続」の比較
では、国民健康保険(国保)と「任意継続」とを比べてみましょう。
加入要件 | 他のいずれの健康保険にも加入していない人すべて | ・2ヶ月以上社会保険に加入していた人 ・退職後20日以内に申請(期限厳守) |
加入期間 | 条件を満たす限り無期限 | 2年間 |
脱退条件 | 他の健康保険に加入したとき | ・加入後2年が経過したとき ・保険料を1日でも滞納したとき ・就職などにより他の社会保険に加入したとき |
手続場所 | 各市区町村役場 | 協会けんぽ各都道府県支部 |
手続書類 | 社会保険の資格喪失証明書 | 資格取得申出書(手書き用/入力用) |
保険料の計算方法 | 市区町村により異なる | 都道府県により異なる ※平成30年4月からの保険料額表を参照 |
肝心の保険料ですが、これは住んでいる場所や扶養家族の有無・人数などの条件により金額が異なってきます。
下のシミュレーションサイトで、あなたの状況に沿った保険料を調べてみましょう。
お住まいの都道府県を選択して「計算スタート」ボタンを押すと、「国民健康保険料自動計算サイト」で市区町村の選択画面が表示されます。
その後は表示された画面の手順で、年齢や収入などを入力すると保険料が計算できます。
いかがでしたでしょうか?
一つ大切な要素としては、「国民健康保険には扶養という概念がない」ということです。
ですので国民健康保険は加入する人数によって保険料が異なります(=人数が多いほど保険料が高くなる)。
一方で任意継続は、扶養家族として条件を満たす家族などの人数に対して保険料の追加はありません。つまり扶養家族が多い場合には、任意継続を選択する方がお得である可能性が高いです。
ただし何人以上だと任意継続のほうがお得か?というのは一概には言い切れませんので、ご自分の条件で国民健康保険と任意継続の保険料を計算し、比較してみることが必要です。
国民健康保険への加入手続き
国民健康保険か、それとも任意継続か、どちらにするか決めたら、各々の期限内に手続き済ませましょう。
手続き方法については上記 健康保険の切り替え:3つの選択肢 にも記載していますが、ここでは愛知県名古屋市の例で、国民健康保険への切り替え加入手続きを紹介します。
1.退職後14日以内に、市区町村の役場にある国民健康保険の窓口を訪れます。
<持参物>
- 健康保険の資格喪失証明書・退職証明書・離職票のうちいずれか1つ
- マイナンバーが分かるもの(通知カードなど)
- 身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
- 印鑑(認印)
このうち一番上の書類(健康保険資格喪失証明書または退職証明書または離職票)は、国保加入の手続き時点では手元にない状況も考えられます。
僕の場合(愛知県名古屋市)は、勤めていた会社の電話番号と総務担当者名を伝えることで、役場の職員の方が直接その場で会社に連絡して退職済みであることを確認してくれました。ですので、これらの書類なしで手続きができました。
2.数日で下記のような「お知らせ」が自宅に届きます。
僕の場合は、役場で手続きをした2日後に届きました。
この「お知らせ」に記載されている<必要なもの>を用意します。
3.役場の国民健康保険窓口を再び訪れて、健康保険証を受け取ります。
<持参物>
上記2.「お知らせ」に記載された<必要なもの>
- 自宅に届いた「お知らせ」
- 通帳の届出印
- 口座番号が確認できるもの(預金通帳、キャッシュカードなど)
これらを持参すれば、役場の窓口で、その場で健康保険証を受け取ることができます。
保険料の支払いは、愛知県名古屋市の場合は基本的に口座振替となります。
もし、手続きをしなかったら…
会社を退職して保険証を返却した後、もし切り替え手続きをせずに放置してしまったらどうなるのでしょうか?
この場合は健康保険に「未加入」になってしまうと思うかもしれませんが、実際には「国民健康保険に加入」したことになります。
なぜなら我が国・日本は国民皆保険だからです。
他のいずれの健康にも加入していない人は、国民健康保険に強制加入となります。
ただし手続きをしていないので手元に保険証がありません。
病院を受診すると、その場では一旦、全額自己負担となってしまいます。
また未払いの国民健康保険料も加入時点に遡って納付を求められてしまいますので、忘れずに切り替え手続きを行いましょう。
まとめ
配偶者など家族の被扶養者になれない場合は、国民健康保険または任意継続いずれを選択したとしても、安くない保険料を納付することになります。
それまでの会社勤めならば、社会保険では保険料の半分を雇用主である会社が負担してくれていました。(※もちろん雇用主負担がなければ、その分の給料が増えているのかもしれませんが…) しかし会社を辞めたらその会社負担分がなくなり、満額(=今までの2倍くらい)を支払わなければならないのですから、保険料が「安くない」むしろ「高い!」と感じてしまうのは当然と言えば当然です。
とはいえ退職後のあなたが自営業者ではなく無職なら、収入が無くなったのに支出(健康保険料)は今までの2倍ということになります。
いずれにしても支払いを免れることはできませんので、速やかに切り替え手続きを行うことに加えて、1日も早く収入を得られる状態を取り戻すことが大切です。